5月29日の詩 忘却と真理

なにか食べたい。なんでもいいが、美味しいものがいい。だが実際は、食べるかわりに、私は眠るのだ。また反対に、多くの場合、少しでもいいから眠りたいときでさえ、私は起きて、食べはじめないといけなくなる。

さて、全くもって同じ調子で、彼はといえば、与えられるかわりに、与える側へとまわる。そして、疑いようのない勝利のかわりに、苦杯へと手を伸ばすのだ。

そうまでして彼が守り抜り抜こうとした唯一つのもの、本当に尊いと彼が信じ続けたものでさえ、今となっては名前までも忘れ去られてしまった。

そんな風になってから、とても長い年月が経った。それでも、忘れ去られたそれは、時の中で死んでしまったのではなく、単に今いっとき暗闇の中で眠っているだけであって、その実、目覚めの日を待ち続けているように、私には見える。