5月5日の詩 雲の上のおうち
プロペラの音が聞こえて目が覚めた。つけっぱなしの腕時計は朝9時で、少し寝坊したかなと思う。
寝返りをして気がつくが、見知らぬ場所だ、ここは。そういえば、寝てるときからずっと小さな違和感があった。枕の高さ、布団や着てる服の硬さなど。
布団はとにかくあったかくてふかふかだから、たぶん悪い目に遭うということはなさそうだ。だがそれならそれで、お世話になったこの見知らぬ誰かへ然るべき挨拶をしなければならないんじゃなかろうか。
開けっ放しのカーテンから明るい陽が差し込んでいる。とにかく爽やかな朝だ。そうだ、いつまでも横になっているわけにはいかない。
起き上がって窓の外を見ると、一面に、どこまでも、地球の果てまでずっと雲が広がっているようだった。もはや空に遮るものはなく、太陽はただひとつ真っ直ぐに雲海を照らし、彼方まで真っ白に輝かせている。
見上げるのでなく眼下に広がるその景色に大変な違和感を覚えるが、すぐに、ああ、自分はいま夏の雄大積雲のてっぺんのところに建つ家の中に居るのだな、とわかった。