いすきですのブログ

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6月10日の詩 サハラゲートの詩人

その時ぼくはもう何も考えなかった。視界は右へ左へ大きく動き、同時に激しく小刻みにも揺れた。真っ赤なランプが点灯してサイレンが鳴り響く。通信はとっくにロストしていた。その時、ぼくは宇宙にいたのだ。落ちゆく船の中に。

 

ぼくは未完のミッションを抱えていた。軌道上を安定航行していた衛星に伴って、はじめぼくはデブリの回収を任されていた。デブリとは地球の周りを飛び交う大小様々の浮遊物のことで、宇宙ゴミなんかって言われたりもする。君は知ってるかもしれないね?

 

デブリは何かと脅威になるからといって、僕はそのミッションを与えられたとき、とても嬉しかったんだ。自らを誇りに思った。地球はいま、たくさんの問題を抱えているだろう?実は、デブリもその一つなんだ。それくらいの脅威なんだ。そんな問題を僕に任せてもらえるなんて、光栄に思わないわけがなかった。

 

僕は衛星からソナーを使ってデブリ群を特定し、それから特殊な機械でそれらをどんどん集めていった。やがて破片が寄り集まってある程度より大きくなると、今度こそそれを地球めがけて落とすんだ。すると大抵それは空気の力で燃え尽きてしまう。仕事自体は地道だけど、僕はとてもやりがいを感じていた。

 

だけど、ある日ぼくは相手にしてはいけないものを見つけてしまった。そして結局、それが原因で衛星は速度を失い、軌道予測は墜落を示していた。

 

メデューサだよ。君は信じないかもしれないけれど、メデューサが居たんだ。彼女は僕を石にはしなかったけど、衛星が落ちれば十分だってわかってたんだろう。彼女は地球を睨みつけていた。まるで、地上の人間すべてを石に変えようとしているみたいに。

 

僕は太平洋に落っこちた。幸いにも命は無事だった。でも、もう前みたいにはやってられないっていうのはすぐにわかったよ。僕がメデューサを見たことは誰も信じてくれなかったし、そんなことを言って衛星を落としてしまう僕は、プロジェクトをクビになってしまった。まあ、実際にはそれはわからないけれど。なぜなら僕は、彼らの正式な連絡を受けたことがないからね。ソナーが思いもよらず役に立って、海に落ちてから自力でなんとか陸地に上がり、そこでもうのんびりやっていたんだ。僕自身、ダメだってわかったのさ、僕が。なぜなら、本当にはメデューサなんかいるわけないからね。いや、確かに見たんだけどさ。

 

それからはずっとそこで暮らしていたよ。あとからわかったんだけど、僕にも縁がある国だった。そのせいかどうか、僕は随分暮らしやすいと感じたな。

 

そうして僕は、詩人になったんだ。あのデブリを集める日々を終えて、半分焼きが回っちまった僕は、デブリの代わりに言葉を集めて詩をつくる、ちっぽけな詩人になったんだ。