いすきですのブログ

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ジオラマの夢(これはかなり完成度が低い)

ジオラマ ジオラマ

奥へと続く長い道の端っこに僕は立っている。天井は高い。道幅は余裕を持って人がすれ違える程度。よく見る並の蛍光灯が等間隔で照らしているが全体的に少し暗い。足下の両わきには非常灯。ふーんここがジオラマなんだと感心しながら僕はあたりを見回した。ここは夢の中なのだ。僕は今、ジオラマの夢を見ているはずだと確信している。

 

ジオラマなら命のジオラマだろう。僕のことならそれしかない。それ以外なら小さな頃のおもちゃのためのジオラマもあり得るけれど、そんな趣じゃないらしい。

 

ドア、ドア、ドアが続くと気付いて、僕は順番に全て開けていかなくてはならないだろうと感じる。(なお、本当のジオラマなら普通はこんなに味気ないことはないだろう。これはこのジオラマが特別だからで、つまり僕の命のジオラマボキャブラリーを欠いているということだ。そして、何が本質的に欠かれているかをここで知らなくてはならない、という仕組みなのだろう。おそらく。)

 

ドアは両端にあり、これが2週間前に見かけたホテルの廊下のビジョンとわかる。夢は記憶の整理だ。廊下の両側にずらっと扉が並んでいるわけなのだけど、どっちから攻略しよう? 交互に行くか、まずは片側を全て調べ尽くしてしまうか? まあともかく、いま選ぶべきなのは、左右の扉のどちらかだ。迷ったらいつも右を選ぶと僕は決めているので、その法則を発動した。一つ目。

 

バックドラフトだ。ご挨拶だ。皆さんご存知でしょうか? 火事のとき、部屋の中の酸素濃度が低下して炎がいったん鎮まるものの、例えば消防士が鎮火のために外からドアを開けたその瞬間、一気に反応が再開されて、爆発的な火炎が起こること。これをバックドラフトと言います。一つ目の扉はバックドラフトを起こした。ジオラマなんて嘘っぱちだ!僕はふきとばされて壁に叩きつけられる。同時に扉がパタリと閉まる。これで満足だということらしいな?

 

こんなことは二度とゴメンだと思うので、扉には「開けるな!バックドラフト注意」と書き込んだ。2つ目の扉を開けるつもりもない。でも、やらなければならないだろう。だって、まさか、このバックドラフトが僕の命のジオラマに足りなかったものですか? それに、このたくさんあるドアの一つくらいは、僕をスーパーカーに導いてくれるかもしれない。やけっぱちですぐ隣の扉を攻略する。特殊部隊のように素早い。

 

さて、ものすごく明るい!またもやバックドラフトかと思わず身構えたのだが、どうやらそうではないらしい。というか、実際にはもう廊下も何もここにはなくて、どうやら僕は夢から醒めてしまったようだった。なぜか部屋の電気がついているがこれが眩しくさせたのだろう。リモコンに頭が当たって寝てる間に点けてしまったのかもしれない。

 

僕は照明を再び消して、今度こそ馬鹿なことが起こらないようにリモコンを反対側の壁に向かって放り投げた。同時に枕元のアイマスクを着用して、もう白みだした早い朝を真っ暗な夜に取り替えた。もうすぐ夏がくる。夏より冬のほうが僕は好きなつもりだが、すこし気持ちが高揚する。

 

ジオラマで探し出すべき答えは、拒絶されてしまった。一日に一つしか扉を開けてはいけないのかもしれないが、以来ずっとジオラマの夢は見ていない。だが、期待しすぎることはないだろう。夢は単に夢だし、僕が本当の意味で知らないものは、知らないことも知らないのだから、答えとは、生きていくなかで見つけなければならないのだろう。